1.溶射皮膜と硬質クロムめっきの耐摩耗性、耐食・防食性の比較と評価
2.ボール・オン・プレート往復式摩耗試験機による耐摩耗性皮膜の比較と評価
3.塩水噴霧試験による耐摩耗性皮膜の耐食・防食の比較と評
4.溶射皮膜と硬質クロムめっきの耐摩耗性の比較と評価
Top Page ▲


1.溶射皮膜と硬質クロムめっきの耐摩耗性、耐食・防食性の比較と評価
溶射技術は表面改質技術の一つであり、材料表面の高性能化を目的として応用されている。特に、材料表面の摩耗を減少させることを目的とした耐摩耗溶射皮膜が広く応用されている。一方、高硬度で耐摩耗性に優れている硬質クロムめっきも、多くの機械部品などに適用されている。しかし、 硬質クロムめっきは、代表的な湿式表面処理法に属する電気めっき法によって成膜されており、めっき工程に多くの化学薬品類の使用に伴う廃液規制を受けている。このため廃液処理設備やその管理に莫大な投資が必要となり、特に硬質クロムめっきでは、有害な六価クロムを含む電解液を使用することから、一段と厳しい環境汚染対策が必要とされ近年の動向として国内の企業では取り扱わない傾向にある。

そこで、めっきにとって代わる処理法として、化学薬品を一切使わない溶射による皮膜形成法の応用開発が活発に進められている。

今回はこれら耐摩耗性皮膜が応用される使用環境は腐食性も高い場合があり、本来の「耐摩耗性」に加えて「耐食性」および「基材に対する防食性」も考慮して、耐摩耗性試験と塩水噴霧試験を実施した。

なお、試験片は日本溶射工業会・ハードフェーシング委員会の担当で作製し、耐摩耗性試験は足利工業大学・機械工学科(戸部省吾教授)のもとで実施およびコメントを頂き、また。塩水噴霧試験は福岡県工業技術センター・機械電子研究所で実施し、有明工業高等専門学校・物質工学科(川瀬良一教授)にコメントを頂いた。

1.試験片の作製

皮膜仕様

No

表面処理の種類・皮膜の構成

膜厚 [μm]

トップコート (工法) ボンドコート (工法)

[1]

WC/CoCr (HVOF -溶射-)

310

[2]

WC/Cr3C2/Ni (HVOF -溶射-)

310

[3]

グレーアルミナ (APS -溶射-) NiAl (APS -溶射-) 280

[4]

クロミア (APS -溶射-) NiAl (APS -溶射-) 280

[5]

ハステロイ C276 (HVOF -溶射-)

300

[6]

硬質クロムめっき (サージェント浴)

50


2 溶射材料の化学組成(mass%)

化学成分 W Co Cr Ni Fe C 粒度
(μm)
WC/CoCr Bal. 10.3 4.0 - 0.1 5.8 -45+15
WC/Cr3C2/Ni Bal. - 19.1 18.7 0.2 6.1 -53+10

化学成分 Al2O3 TiO2 SiO2 Cr2O3 Fe2O3 Others 粒度(μm)
グレーアルミナ 94.0 2.5 2.0 - 1.0 Bal. -53+15
クロミア - 2.0 - 96.0 - Bal. -90+15

化学成分 W Co Cr Ni Mo Fe Mn Si C Al 粒度
(μm)
ハステロイC276 4.598 0.366 16.080 Bal. 16.768 6.522 0.739 0.674 0.032 - -53+20
NiAl - - - Bal. - - - - - 4.5 -90+45


3 封孔処理(溶射皮膜は全て実施)

材   質 有機系封孔剤
封孔処理法 浸漬


4 摩耗試験用試験片・塩水噴霧試験用試験片

基材材質 SS400
基材寸法 摩耗試験用試験片:25× 50× 5t
塩水噴霧試験用試験片:70×150×15t
表面仕上 研削砥石 ハステロイC276、硬質クロムめっき:WA60
その他 :D120