1.溶射皮膜と硬質クロムめっきの耐摩耗性、耐食・防食性の比較と評価
2.ボール・オン・プレート往復式摩耗試験機による耐摩耗性皮膜の比較と評価
3.塩水噴霧試験による耐摩耗性皮膜の耐食・防食の比較と評価
4.溶射皮膜と硬質クロムめっきの耐摩耗性の比較と評価
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4.溶射皮膜と硬質クロムめっきの耐摩耗性の比較と評価
                 (足利工業大学・機械工学科)

緒言
 高硬度で耐摩耗性に優れている硬質クロムめっきは、従来、多くの機械部品などに適用されているが、電気めっき法ではシアン化物、カドミウムや6価クロムなど、排出量が規制されている化学薬品を使用するため、廃水処理に莫大な投資が必要とされる。そのため電気めっきは国内の企業では取り扱わない傾向にある。そこで化学薬品を一切使わない溶射で、めっきにとって変わる皮膜の開発が進められてきた。
 前回報告レポート(「ボール・オン・プレート往復摩耗試験機による耐摩耗性皮膜の比較と評価」:本ホームページの2.項)は無潤滑下で摩耗試験を行ったが、硬質クロムめっきは、例えば内燃機関のシリンダーなど潤滑状態でも多く使用されるため、今回は潤滑下で鋼球を相手材として摩耗試験を行い、硬質クロムめっきとWC/CoCr、WC/Cr3C2/Ni、クロミア、グレーアルミナ、ハステロイC276の摩耗特性の比較と評価を行った。

2 実験方法
 本研究では、図1のボール・オン・プレート往復摩耗試験機を使用した。試験片のうち、WC/CoCr、WC/Cr3C2/Ni、ハステロイC276は高速フレーム溶射法(HVOF)で成膜し、グレーアルミナ、クロミアは大気プラズマ溶射法(APS)で、クロムめっきは電気めっき法(サージェント浴)により形成した。
 ボール・オン・プレート往復式摩耗試験機は、相手材に9.525mmの鋼球を用いて摺動速度0.042m/s(2,500mm/min)、荷重を10Nに設定し、摩耗距離は10,000mとした。試験前と2,000mごとに試験片と鋼球の重量を測定し、試験開始時に摩擦係数も測定した。拡大鏡による表面観察も試験前と試験後に行った。
 潤滑装置は、潤滑油を滴下する方式で、図1のように製作した。潤滑油はベースオイル(基油)であるシェルビトリヤオイルの動粘度68mm2/sのものを用いた。滴下量は1往復につき、約1滴とした。したがって、試験片と相手材の接触面には常に新しい潤滑油が供給された。
 潤滑下で溶射皮膜の摩耗量を測定するときの問題点は、試験中に潤滑油が皮膜の気孔中に浸透し、重量が増加してしまって摩耗量を正確に測定できない恐れがあることである。予備実験の結果、本実験で使用した潤滑油の場合、潤滑油中に48時間浸漬すると、潤滑油の気孔への浸透は飽和状態となることが分かったため、摩耗試験では、同じ時間、試験片を油中に浸漬した後、試験を開始した。また、摩耗試験後の重量測定では、アセトンで試験片を十分洗浄してから行った。その手順はすべての試験片で同一とした。

Page - 1 1.緒言 / 2.実験方法
Page - 2 3.摩耗試験機 / 4.参考資料
Page - 3 5.実験結果-1(1.試験片および相手材の摩耗量/2.摩擦係数の測定結果)
Page - 4 5.実験結果-2(3.拡大鏡による接触面の観察結果)
Page - 5 6.実験結果の考察 / 7.結論