3.1受動的音響制御効果を期待した溶射ブースによる減音
溶射プースのドアを開閉したことによる違いをF4 およびJP-5000 を対象に解析した。F4 の騒音周波数特性を図4 に,JP5000 の騒音周波数特性を図5 に示す。この際,騒音計による計測結果で20dB 程度の減音効果を確認している。スペクトログラムによる表現では,図6 から図9 までのようになる。図6 はF4 の騒音に対しブースドアを開けた場合,図7 は閉じた場合である。同様に,図8 および図9 はJP5000 の騒音に対する結果である。これらの図よりいずれの機種の騒音ともに,6kHz 以上の高周波数帯域でブースドアを閉めることによる受動的遮音効果が確認できる。
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3.2受動的音響制御効果を期待したイヤーマフによる減音
ANC ヘッドフォンを電源OFF の状態で(すなわちANC 機能をOFFにして)着用した場合を想定して実験を行った。耳全体を覆うタイプのヘッドフォンであるため,ANC がOFF の状態で も受動的な遮音効果が期待できる。図10 および図11 に,F4 およびJP5000 に対するヘッドフォンのみの受動的遮音効果を示す。両図より,受動的制御の効果として4kHz 以上の周波数帯域での減音が確認できる。
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3.3受動的音響制御と能動的音響制御を併用した減音
さらに,低周波数帯域で効果が期待できる能動的音響制御を併用した場合の結果を図12,図13に示す。使用したANC ヘッドフォンには,制御特性によりA,B,C の3 種類のモードを選定可能であるが,モードごとの違いはそれほど顕著ではなかったため,本報告では,比較的広い周波数帯域を対象としたモードC の結果を掲載する。ANC ヘッドフォンの効果は1kHz 以下の周波数帯域であるため,図12,図13 からはその効果が判然としない。そこで,JP5000 の騒音について,低周波数帯域を対象としたスペクトログラムを図14(制御前,ヘッドフォンは着用),図15(制御後)に示す。これらの図を比較することで,主として1kHz 以下の周波数帯域で能動的音響制御の効果が高いことが確認できる。
今回使用した市販のヘッドフォンは,電車内の騒音など通常の騒音を対象としたものであり,今回のような大音量の騒音を対象としたものではないが,周波数を限定すればその効果を十分に確認することができることがわかった。
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3.4考察
今回の実験を通して,以下のことが確認できた。
- ブースドアを閉めると6kHz〜10kHz 以上の高周波数で遮音効果がある。
- ANC ヘッドフォンはOFF のままでも受動的な遮音効果があり,4kHz 以上で騒音が低減する。これは耳栓と同様の効果である。
- ANC ヘッドフォンの能動的制御効果は主に1kHz 以下である。
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