1.試験片
試験片の形状寸法を図1に示した。材質はSUJ-2で、直径は50mm、円筒面に皮膜を形成した。試験片の円筒部の詳細図を右側の円の中に示してある。同図のように円筒部にはアンダーカット加工が施してあり、この部分に皮膜を形成した。皮膜を形成後、研削加工を施してある。
相手材の直径は150mmで、材質は炭素工具鋼のSK3である。円筒部には段付き加工が施してあり試験片に接触する部分の長さは4mmである。 |
2.成膜方法
使用したWC系溶射材料の化学組成を表1に示した。3種類の材料を用いた。
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試験片への成膜は高速フレーム溶射法(以下、HVOF法と略記する)によって行った。溶射条件を表2に示した。
硬質クロムめっきは、サージェント浴を用いて、成膜した。めっき条件を表3に示した。
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3.転動疲労試験法
転動疲労試験機の全体図を図2に示す。
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同図左からインバータ付きモータ、トルク変換機、軸受け、相手材と続き、相手材の上部に試験片がセットされる。試験片にヘルツ応力を負荷させるため、重りがその上に乗るようになっている。 相手材は、直径150mm、幅15mmのSUJ-2で作製した。転動疲労試験は、相手材を駆動側、試験片を従動とし、相手材回転数500rpm、荷重100Nで試験片表面にピットが発生するまで試験を行った。接触で発生するヘルツ応力は、表4に示したとおり硬質クロムめっきは180N/mm2、WC系は206 N/mm2であった。
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摩耗量は試験前と1.8×106回転ごとに試験を中断し、試験片を取り外して測定した。転動摩擦係数は、動ひずみ測定器によって1.8×106回転ごとにトルクを3600秒測定し、計算によって転動摩擦係数を求めた。また、顕微鏡による表面観察は試験前と1.8×106回転ごとに行った。
摩耗試験後の重量測定はアセトンで試験片を洗浄し十分乾燥させ、電子天秤で重量測定を行った。その手順はすべての試験片で同一とした。転動疲労試験機の試験片と相手材の拡大図を図3に示した。 |
なお、この装置には皮膜がはく離した場合、その振動を感知して、モータの回転を止める自動停止装置も装着されている。
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