1.試験片および相手材
試験片形状寸法を図1に示した。材質はSUJ-2で、直径40mm、円筒面に皮膜を形成した。試験片の円筒部の詳細図を右側に示してある。同図のように円筒部には、0.3mmのアンダーカット加工が施されており、この部分に皮膜を形成した。皮膜を形成後、研削加工を施した。
図1 転動疲労試験 試験片形状寸法 |
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相手材の形状寸法を図2に示す。相手材直径は150mmで、材質はSUJ2である。円筒部には段付き加工が施してあり、試験片に接触する部分の幅は3mmとした。
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図2 転動疲労試験 相手材形状寸法 |
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2.試験片溶射条件
使用したWC系溶射材料の化学成分を表1に示す。同表に示すように、3種類の材料を用いた。試験片の成膜は、HVOF法によって施工した。溶射条件を表2に示す。
表1 WC系溶射皮膜の化学成分表(mass%) |
化学成分 |
W |
Co |
Cr |
Fe |
Ni |
C |
WC-12%Co |
Bal. |
12.2 |
− |
0.09 |
− |
5.2 |
WC-10%Co-4%Cr |
Bal. |
10.2 |
4.3 |
0.25 |
− |
6.0 |
WC-20%CrC-7%Ni |
Bal. |
− |
17.6 |
0.20 |
6.9 |
7.1 |
表2 試験片溶射条件 |
溶射装置
| JP-5000
|
ガンバレル
| 6インチ
|
燃料
| 灯油
|
酸素流量[l/min]
| 890
|
灯油流量[l/min]
| 0.3
|
粉末供給量[g/min]
| 76
|
3.試験片溶射条件
転動疲労試験機の全体写真を図3に示す。また、試験片と相手材の一部の拡大写真を図4に示した。同図に示すように、モータからの駆動を相手材がダイレクトに受け、相手材が駆動側、試験片をそれに従動させるようにした。回転数は相手材が400rpm、試験片が1500rpm、荷重100Nに設定し行った。この場合の試験片と相手材の接触による最大ヘルツ応力は約331N/mm2,平均ヘルツ応力は約260N/mm2でる。転動疲労試験は、1.8×106回転(上記回転数の条件で20時間)ごとに停止し、摩耗量測定、顕微鏡観察、X線残留応力測定を行った。顕微鏡観察およびX線残留応力測定は試験片の円周上に等間隔に定めた8点とした。転動摩擦係数では、トルク変換機、動ひずみ測定器によって1.8×106回転ごとにトルクを3600s測定し、計算によって転動摩擦係数を求めた。
試験は条件を揃えるため、1.8×106回転ごとに停止させたとき、相手材を#800および♯1000の研磨紙によって研磨、その後アセトンによる洗浄、軸受けのグリスアップを行った。試験片の質量測定前はアセトンで洗浄し十分乾燥させ、電子天秤で質量を測定した。
尚、この試験機は、皮膜はく離を検知し、自動停止が可能なようにリミットスイッチをつけた。
図3 転動疲労試験機の全体 |
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図4 試験片と相手材 |
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○ 試験片:SUJ2
○ 相手材:SUJ2
○ 相手材回転数:400rpm
○ 試験片回転数:1500rpm
○ 荷重:100N
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4.X線残留応力測定および条件
X線法によって残留応力を測定した。冒頭に述べたように測定の対象はWCである。X線応力測定条件を表3に示す。1.8×106回転ごとにX線残留応力測定を行った。測定は8点(顕微鏡観察と同点)で行い、それぞれの点の残留応力の変化を調査した。使用したX線回折装置の全体図を図5に、応力測定部(ゴニオメータ)を図6に示す。
表3 WCについてのX線応力測定条件 |
X線
| Cr-kα
|
Diffraction plane
| 124.438°
|
Diffraction angle(h,k,l)
| 1,1,1
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Filter
| V
|
Counter
| PSPC
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Tube voltage[kV]
| 40
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Tube current[mA]
| 200
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Collimeter[mm]
| 2.0
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図5 X線回折装置全体 |
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図6 X線応力測定部(ゴニオメータ) |
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